「夜のMBA」、それは「教養?」

日本版「ムーク」(大規模オープンオンライン講座)、つまり、有名大学の有名教授の講義をオンラインで受講し、一定期間継続すると「修了証」がもらえる、という米国の仕組みの真似である。放送大学のような「大学卒」の資格と結びついたものではなく、単発の1年未満の講義である。恐らく、他の通常の短期プログラムと同様、修了すると“Diploma”が与えられるのであろう。

例えそれが有名大学の人気取りだとしても、それはそれで無いよりはいいし、受ければ受けたで何がしかのプラスをその人にもたらすであろう。それは知識そのものかもしれないし、有名教授の単位認定を受けたという誇りかもしれないし、人生における自信かもしれない。

但し、それは欧米の人材市場において必ず要求されるCurriculum Vitae (CV)=「履歴書」においては、「その他」に記載される事項であって、所謂「大学卒」とか「経営大学院卒(MBA)」とかといった「資格」としては扱われず、“job”に直結するものではない。

欧米の企業社会、人材市場では、「大学卒」「経営大学院卒(MBA)」といった「資格」はjob”に直結し、従って職務給制の下では給料・報酬の決定要因となる重要な人事情報である。

例えば「大学卒」で入社しても、働きながら夜間大学院に通い、「経営大学院卒(MBA)」の資格を得れば、会社に届け出たときから扱いが変わり、ワンランクアップした仕事が割り振られるようになる。MBAの資格に夜間に通ったか、昼間コースで取得したかの区別はないのである。MBAに求められる知識や理解力が身に付いたかが問題なのであって、それを昼間学んだか、夜間通学で学習したかは関係ない。

日本企業であれば、「大学院卒(MBA)の資格を取りました」と人事部に届け出たとしても、よくて誉められ、悪ければ「その間残業もせずに周囲に迷惑かけたんだから、恩返しを心がけるよう」諭されることになるだけで、資格取得が即、仕事の変更や、ましてや給料のアップなんかに結びつくことはない。

日本企業の海外現地法人の経営幹部になる派遣社員は、このことを頭に入れておかなければ、「また、優秀なのに逃げられた!」と言って嘆く羽目になるだけである。人を企業という集団の「入り口」(Port of Entry)で区別して「身分化する」というのは、人間を能力で見ない、日本独特のカルチャーであろう。

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