ポンジュースは何故、酸っぱくなってしまったのか(?)

 TTP問題も紙上を賑わし、他方、日本食の評価は相変わらず高く、海外で「その国風寿司屋」が繁盛したり、日本からの食品輸出の企てもさまざまに試みられている。

 その日本食だが、材料となるとよく知られていないことも多い。ウナギに至っては、稚魚が太平洋の真只中のどこかで捕獲され、その養殖場所が中国か日本国内なのかで中国産・国産の別が決められる。ウナギの稚魚はただ太平洋を泳いでいただけである。

 海はもともとグローバル(ひとつに繋がったもの)だからまだよいが、これが農産物となるとさまざまな「産地問題」も生じてくる。例えば、味噌は日本各地で、その地方独特の味覚に仕上げられてそれぞれブランド化しているが、残念ながら材料の大豆はほぼ全てが輸入物である。ブラジル産が50%弱、米国産が40%で、日本の食卓に上がる味噌汁は全て南北アメリカからの輸入物でできていると言っていいが、その事実を知らずにいる人も多い。

 海外のスーパーでごく普通に売られ、海外の人々が食しているものもある。醤油(soysauce)、カップ麺、ヤクルトはよく知られた日本食品である。健康志向の強い人々にとっては豆腐も食生活の必需品だ。

 1990年のオレンジ輸入の自由化以降、日本のスーパー、自動販売機で売られているオレンジジュースはほとんどがバレンシアオレンジであり、100%輸入品である。米国やブラジルから濃縮ジュースの形で、専用の「タンカー」を使って日本国内に持ち込まれている。多くの日本人がかつて親しんだ愛媛産のミカンジュース「ポンジュース」を今や酸っぱく感じることだろう。

 グローバル化は経済や経営の問題として意識されることが多いが、実は、海を隔てた他国の味覚にまで相互に影響を与えているのである。

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