「亥」は「ブタ」、「年俸制」は幻

今年の干支は「巳」(へび)である。年賀状にはその年の干支を描くのが習わしだから、今年の年賀状の絵柄を考えた人は苦労したに違いない。蛇の場合、リアルに描くのはまずいから、大体は可愛く描かれている。干支は「ね、うし、とら、う、たつ、み、うま、ひつじ、さる、とり、いぬ、い」の十二支であるが、本来は十干十二支であって60通りの組み合わせがあり、日本では「丙午(ひのえうま)」がその年に生まれた女の子は(将来結婚して)夫を苦しめる悪婦になるという迷信が広く知られている。実際、直近の「丙午」=1966年の出生率は女の子の出産を恐れて極端に低かった。

干支はアジアの漢字文化圏において信じられていると思われているが、ベトナムにもあるようで、日本、韓国、北朝鮮、中国、台湾だけのものではないらしい。マレーシアの街を歩いていると、ふと気づくと商店街の寄合所のような場所に「蛇踊り」の龍が飾ってあったりすることと併せて考えると、中国人の住む国を中心にアジアのかなり広い地域で影響があるのかもしれない。

1月5日の日経新聞の「プラス1」の「訪ねてみたい冬まつり」で『長崎ランタンフェティバル』が6位に入っていたが、『長崎ランタンフェティバル』では毎年その年の干支を模した巨大なランタン・オブジェが湊公園の会場に高く掲げられる。6年前=2007年の巨大ランタン・オブジェは「ぶた」であった。2007年が「いのしし年」だったからである。

日本では十二支の最後の「い」は「亥」であり、「いのしし」である。しかし、それは日本人が何かの都合で勝手にそうしただけのことであって、本来は「亥」は「ぶた」であり、十干十二支を用いるアジアの国々ではごく普通に「ぶた」である。だが、日本人は意外にこの事実を知らない。恐らく日本では「ぶた」に対する侮蔑の感情が存在し、「ぶた」年の出生率が極端に落ちるとか、個人的に「嬉しくない」「恥ずかしい」という気持ちが生じるのを避けたからかもしれない。

「和魂洋才」「技術導入・技術改良」ならいいけれど、意味も分からず「猿まね」をし、日本の本来の仕組みを壊し、同時に導入するはずだった海外のノウハウ・制度も身に着かない、というのは最悪である。身近なところでは、近年の「年俸制」導入問題が起こった。年功序列賃金を改めたくて「年俸制」に飛びつき、「目標管理制度」を導入した挙句、従業員の士気が下がって困っている日本企業は実は多い。

しかし、そもそも欧米企業の給与制度は「職務給」であって「年俸制」ではないし、「年俸」というのは給与の言わば建値、支給対象期間のことに過ぎない。欧米企業に「年俸3000万円」の社員はいるかも知れないが、その給与を決める根拠はあくまでその社員の “job” なのである。

外資系人事コンサルタントには欧米企業のプラクティスを知らない単なる「MBA帰り」が実は多い。ただし、外資系コンサルタント会社に騙された(?)のは、自ら勉強することなく、安直に彼らのノウハウを借りようとした日本企業の方が悪いには違いない。

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