海外経験と「異質(heterogeneous)」を見る目

 ソニーの盛田昭夫を初めとして、国際派として知られた日本企業のトップ・マネジメントは以前からみられたが、1990年代に入ると日本企業においても海外経験のある人材や国際派の社長登用事例が目に付くようになってきた。日本のトップ・マネジメントのキャリアがグローバリゼーションの進展に伴って変化してきたのである。

 例えば、三菱商事の槙原稔社長(以下、役職・肩書はいずれも就任当時)の米国三菱商事社長経験、ブリジストンの海崎洋一郎社長のブリジストン・ファイアストン社長経験、キヤノンの御手洗冨士夫社長のキヤノンUSA社長経験は有名だが、トヨタ自動車の奥田硯社長も若い時にトヨタ自動車販売フィリピン勤務経験があることが知られている。

 その弟である大丸の奥田務社長も大丸オーストラリア社長を経験しているし、帝人の安居祥策社長も帝人ファイバー・インドネシア社長の経験者である。パナソニック(松下電器産業)の中村邦夫社長が米国松下パナソニック社長だったこともよく知られている通りであり、コマツの坂根正弘社長もコマツドレッサー社長(米国)経験者である。

 いま、日立製作所の経営立て直しの中心人物となっている中西宏明社長も、2003年にIBMから買収したものの赤字続きだったHDD事業立て直しに米国で奔走した人物である。中西社長は海外から、日本のソトから「世界の中の日立」というものを見てきた。「このままでは世界で戦えない」、そう感じた中西社長の経営改革のスピードは速かった。

 勿論、単純に海外経験のある人材=国際派と言える訳ではないが、これらの事例はいずれも、転換期を迎え、言わば海図のない航海に立ち向かって行こうとする日本企業の舵取りに、海外経験を通じて養われた「異質(heterogeneous)」を見る目が有用であることを示しているように思われる。
  

カテゴリー: グローバル人材, 日米企業(比較), 異文化マネジメント パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です