IT技術と「大部屋」の関係

 米国ヤフーが原則として、社員の在宅勤務を禁止したことが議論を呼んでいる。日経新聞によれば、5月に「6月以降、全社員が『オフィス』に出社して勤務する」ことを命じたメールが人事担当上級副社長から全社員に送られたようだ。

 シリコンバレーと言えば、自由闊達な議論、自由な服装(ダークスーツ着用がドレスコードだったかつてのIBMの正反対)、会社支給のパソコンを自宅に置き、出社義務を負わず、自分の自由な時間配分の中で「仕事」をすれば、「結果」で評価され、会議もテレビ会議で済ませれば出社する必要性を認めない、という世界だった筈である。

 日本企業でも、サテライト・オフィスと並んで在宅勤務制度が導入された例はたくさんあるし、高い家賃の都心の本社ビルの専有面積を減らしたり、無くしたりすることでコスト削減効果も追及された。働く社員の側も、勿論、ラッシュアワーの満員電車内で繰り広げられる消耗戦を回避し、通勤に費やしてきた時間も自分のために使えるのであるから歓迎……「自分の机が無いのは寂しい」という声はあったが……であった。

 それが本家本元の米国シリコンバレーで「在宅勤務禁止令」が出されるとはどういうことなのであろうか(?)

 どうもそれはITや先端情報処理技術のイメージとはかけ離れた、極めて古典的な理由によるらしい。好業績を上げているグーグルやFacebook のように、大部屋でみんなが一緒にワイワイ仕事をし、頭を突き合わせ、口角泡を飛ばして議論する……業績不振が続くヤフーとしては、そんな風通しのいい職場づくりでテコ入れを図ったということのようである。

 日本でもホンダの「大部屋」や「ワイガヤ」はよく知られている。通信手段は日進月歩で技術進歩を遂げるが、所詮は人間のやることである。「場を共有する」ことの価値が見直されるのは、悪いことではなさそうである。

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