脱炭素社会のカギを握る技術のひとつがEV(電気自動車)であることは言うまでもない。実際、「EVシフト」の動きは世界各国・地域でみられる。EUは規制を強化して2030年までにEV車を1億3000万台に持って行こうとしているし、中国では1台50万円の価格を実現してEVの普及を目指している。
EVの弱点はその航続距離にあり、現在主流となっているリチウム電池の改良が進められているが、既に次世代の電池としてより小型で安全な「全固体電池」の開発が進められている(日本経済新聞、2021年12月3日など)。
EVの普及には(電力の)電源構成の問題をはじめ大きな問題が関係してくる。地球温暖化現象への対応策として目指されるようになった「脱炭素社会」だが、解決への途は多様であり、単純ではない。自動車ひとつとってもEVシフトの他にも水素エンジンもあれば、燃料電池車を目指す動きもある。
他方で、雇用の問題も無視できない。自動車産業はその部品点数の多さから関連企業が多く雇用数が多いのだが、構造が簡単なEVが普及するようになれば自動車産業を抱えた国では関連産業を含めて何十万人分というレベルの雇用が失われると考えられている。
日本では、「2040年にガソリン車全廃」という方針を打ち出したホンダ(本田技研工業)がロケット事業に参入する。既に、(小型)ジェット機を事業化しており、技術開発においては定評のある同社だが、思い切った事業展開であると言えよう。
EV以外の選択肢が出現すれば、そこから関連産業も含めて新しい雇用も生まれるかも知れない。
第二次世界大戦後、二輪車事業から発展してきたホンダだが、「モビリティ」を追求する企業と自己を位置づけることによって遂にロケット事業にまで参入することとなったのは実に興味深い話である。