二つのノートリアスMITI、揺れる東芝、そして「日本型(?)コーポレート・ガバナンス」

 6月26日の各紙朝刊が報じたのは、二つの「ノートリアス・MITI」(悪名高き通商産業省)に関するものだった。

 ひとつは、言わずと知れた25日に開催された東芝の株主総会に関して経済産業省(旧通商産業省)がその影響力を行使して株主の権利を侵害したとされる件である。しかし、世間を驚愕させたのは、もう一つの経産省関係の報道=「経産省キャリア官僚2人詐欺容疑で逮捕」の方ではないだろうか。

 後者の方は、経済産業省産業政策局係長らキャリア官僚2人がコロナ禍で売り上げが減った中小企業関係者として「家賃支援給付金」約550万円を詐取した容疑で、本人たちは罪状を認めているというのである。文字通りの「ノートリアス・MITI」(悪名高き通商産業省)である。

 前者の「ノートリアス・MITI」に関しては、東芝の株主総会で「東芝が経済産業省と一体となって株主の権利を制約しようとした」とする報告がなされ、永山取締役会議長の再任が否決されるという事態が生じた。会社提案が株主総会で可決されることの多い日本企業においては異例のことと言えよう。

 従来、日本企業の経営については、同じ資本主義経済社会ではあっても、通産省(政府)が産業界に強い影響力を持ち、時には産業の再編にも関与し、特に外資の参入には抑制的であるという特徴が指摘されてきた。ノートリアス・MITIは決して悪口ではなく、そのパワーと成功への揶揄でもあった。

 それが今回、主因は東芝経営陣のまずい対応にあるとは言え、東芝の経営問題に関与しながら、結果的には海外株主の攻勢の前に敗れてしまったのである。勿論、敗れたのは東芝経営陣なのだが、経済産業省の落日の姿(?)でもあろう。

 「企業集団」の解体や「株式持ち合い」の解消、外国人株主比率の増大など、日本企業を取り巻く経営環境はこの20~30年で激変した。欧米型追随が必ずしも理想的ではないとすれば、今こそ「日本型(?)コーポレート・ガバナンス」が求められているのではないだろうか。

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