東芝・「不適正会計」事件と社外取締役の限界

 東芝が粉飾決算問題で揺れている。報道では「不適切会計」という用語も使われているようであるが、要は、2001~2002年に米国で起きたエンロン=ワールドコム社事件と、その対策としてのコーポレート・ガバナンスの見直し、日本によるその制度的追随と言える所謂「委員会等設置会社」である東芝において、「監査委員会が機能しなかった」という事実とその原因であろう。

 時あたかも、東京証券取引所と金融庁が定めた「企業統治指針」が2015年6月から適用されたというタイミングで、社内取締役2名+社外取締役3名という「社外取締役の数的多数」下で運営されていた筈の東芝で、何故、社外取締役は機能しなかったのか。「社外」の定義に問題があったのか、あるいは「独立した取締役」は所詮蚊帳の外の人だったのか(?)

 日本銀行・元理事で国内外企業多数で社外取締役を務めた緒方四十郎氏は、大きく二つの問題点を挙げている。

 ひとつは、所謂有識者のような「独立した」取締役は、その企業の営む事業分野に関する「知識と経験の欠如」のために「企業経営に貢献できず」と述べている。
 もう一つは、社外取締役に期待されているのは、結局、「会社の体裁づくりと暴走の予防が主たる役割」なのだとも言う。
(詳しくは、本『グローバル随想』シリーズの一文、「社外取締役は本当に役に立つのか―緒方四十郎の経験から―」を参照のこと。)

 グローバル化の時代と言っても、各国企業の企業行動には一定のパターンがあり、ガバナンスの構造も異なっている。米国企業は株主を何よりも重視し、企業経営者(CEO)を監視することに重きが置かれ、他方、日本企業は従業員の生産性に依存した経営手法を採ることから、概して社外取締役は経営への介入には慎重で、社長の権限が強い。

 日本企業のガバナンス改革は、「監査委員会」よりも「指名委員会」を重視し、社外取締役の権限を強化し、社長(CEO)のパワーに枠をはめることが肝要であろう。

カテゴリー: 日米企業(比較), 異文化マネジメント パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です