社外取締役の勝利?そして、物言う株主!

 セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長が辞任したことが大きな話題となっている。中核子会社のセブン-イレブンの社長人事をめぐる社外取締役との対立の挙句、取締役会で自ら主導した人事案が否決されたことを受けてのことである。

 鈴木氏と言えば、言わずと知れた「コンビニ」の日本における生みの親的存在であり、イトーヨーカ堂創業者を退けて、イトーヨーカ堂、セブン-イレブン、西武百貨店/そごう百貨店をまとめて、セブン&アイ・ホールディングスを立ち上げ、その総帥としてグループ内で逆らう者もない絶対的な実力会長とみられていただけに、新聞、テレビは勿論、週刊誌までが特集を組んで事実関係に加えて「人事抗争の内幕」に至る報道合戦が続いている。

 この「事件」のポイントは二つある。いずれも戦後の日本企業のコーポレート・ガバナンス上、画期的なことである。
 ひとつは、初めて「社外取締役」が機能した点である。その場は2016年3月に自ら設置した「指名報酬委員会」であった。鈴木会長の人事案に社外取締役が納得せず、結局、指名報酬委員会の支持を得られないまま、取締役会が開かれた。社外取締役は、当然、鈴木会長提案の人事案に反対に回った。この、自ら指名報酬委員会を設置しながら、その同意を得られない人事案を取締役会に強硬提案した時点で、鈴木氏は経営者としての「資格」を喪失したと言えるだろう。

 もう一つのポイントは、米国投資ファンドであるサード・ポイント社が株主として、2016年3月に書簡を送り、人事案への反対と共に、鈴木会長の次男で取締役の康弘氏への「権力移譲の疑い」について公言したことだ。次男の取締役としての適格性は不明であるが、「経営に私心あり」と疑われるような経営者はその時点で明確な反論ができなければ「失格」であろう。

 日本企業でも、かつて、三越の岡田社長解任事件のように社外取締役によるガバナンスの発揮はあったが、それは三井グループという「企業集団」のパワーを背景としたものであり、トップが自ら招いた社外取締役が機能した訳ではない。米国株主も何度となく日本企業の経営に関与を試みてきたが、企業集団や株式持ち合いの壁に跳ね返されてきた。

セブン&アイ鈴木会長の辞任は、長期・高齢の経営者の弊害問題とともに、コーポレート・ガバナンス改革が「お飾り」や「体裁」では終わらない時代の到来を意味していると言えよう。

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