「ジョブ型雇用」って何(?)それって新しいもの(?)

 「ジョブ型雇用」が話題になっている。コロナ禍で何やら新しい雇用形態でも出現したかと言えば、そういうことではない。欧米企業で広く採用されている「職務給制度」を導入する動きが日本企業の一部でみられるという話である。大きく言えば、日本企業のこの動きは三度目のブームと言える。

 一度目は、1990年代後半から2000年代初頭であった。経済・経営のグローバリゼーションに伴って世界に展開した各国子会社の事業規模が格段と大きくなり、親会社・親事業部の幹部と一体になって動ける人材が必要となった事態に対応したものである。日本企業が人事制度のグローバル標準を求めて外資系人事コンサルタントの日本法人各社に殺到した時期でもあり、多くのケースでは管理職を対象に「役割給」の形で導入が図られた。 

 二度目はそれから10年ほどたった2010年前後で、人事制度改革の遅れていた企業や2000年前後の大改革の見直しに入った先行組などで、対象を一般社員にも広げる形で見直しが図られるケースが多くみられ、「ジョブ型雇用」の用語が広まった。

 そして最近、また更に遅れていた企業や先行組の人事制度見直しの中で、「職務給制度」(「ジョブ型雇用」)の見直し・再導入の動きが出てきているように思われる。

 「職務給制度」とは、一言で言えば「会社は一つ一つのジョブ(『職務』)の集合体である」という考え方の上に成り立っている。そこでは仕事の内容も権限も個々のジョブ毎に定義されており、職務(「ジョブ」)の価値=給与は基本的には市場(相場)で決まる。

 これに対して、日本企業の人事制度においては、給与は社員一人一人に対して決まっている(「属人給」)一方で、個々人の仕事は予め決められている訳ではない。決まっているのは、その部課が全体として果たすべき職務であって(多くの場合「職務分掌規程」が決められている)、社員一人一人の職務については、部課長がその時に部下として配属されている社員に割り振る仕組みである。与えられた手持ちの部下をどう使うは管理職の腕の見せ所でもあり、部下の側は一つ一つの所属部課を越えてローテーションしていくことで幅広い仕事能力を身に付けて行く。

 日本企業の給与制度改革が遅々として進まないのは、「能力主義」(実力で抜擢?)や「成果主義」(成果給による業績向上)といった言葉に目を奪われ過ぎたからではないのか(?)職務給制度(「ジョブ型雇用」)は、教育制度、とりわけ「専門性と報酬」、個人を重視する社会制度と不可分に結びついており、こうした価値観と対峙することなく給与制度改革を繰り返しても、お決まりの「年功的運用に陥る」罠から逃れられないのではないだろうか(?)

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