社長解任とoutside director

 川崎重工業の社長が解任された。臨時取締役会の投票数は、解任賛成10に対して反対が3、反対の3人は勿論、解任された側で、三井造船との合併推進派であった。解任理由は三井造船との合併を図ったことそのもののようで、合併の条件をめぐる違いではないらしい。

どうやら解任は社内の勢力争い、それも出身事業部門の利害が大きいようである。三井造船との合併が実現すれば、社内最弱小事業部門である造船部門が筆頭事業部門にのし上がり、社内のパワー・オブ・バランスが逆転してしまうからである。

面白いのは、川崎重工の取締役の構成をみると、全員が社内取締役=inside directorであって、所謂社外取締役=outside director がひとりもいないことである。社外取締役の導入例が少ないとされる日本企業でも、最近は社外取締役導入率が5割を超えているのが実情であるから、日本を代表する大企業としてはかなり変わったガバナンスの構造ではあったと言えよう。

欧米企業では、社外取締役がいるのは勿論のこと、社内取締役=inside directorが少数で、社外取締役=outside directorの方が多いのが普通である。典型的なパターンで言えば、会長、副会長、社長が社内取締役で、実際の事業経営に当たる“officer”達は取締役ではない。逆に言えば、事業経営に当たる者の代表者として会長・副会長・社長が取締役会に出てきて、株主の代表である社外取締役に現況を報告し、方針の承認を採る、という形で取締役会が機能している。

もし、川崎重工に社外取締役が存在していたら、どのような投票行動を採ったのか、社長解任の理由が単なる社内勢力争いの様相から、株主に説明できるもっと合理的なものになっていたのかどうか、大変興味深い問題である。

カテゴリー: 日米企業(比較), 異文化マネジメント パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です