シュートの成功率と「意思決定」の関係

  サッカーの日本代表がブラジルで開かれている「コンフェデレーション・カップ」の予選で敗退した。今やヨーロッパ各国のプロチームで活躍する日本人選手は10人を超え、本田や香川、長友のように一軍に定着して主力選手となっているケースも多い。それ故、強豪国の枠に入った不運はあるものの、「あわよくば」予選突破を夢見たファンも多かった筈である。

  しかし、結果としては、初戦のブラジル戦はいいところなく30で敗退、2点先取して期待を持たせた第二戦のイタリア戦も後半逆転負けを喫してしまった。ブラジル戦は「相手を警戒し過ぎた」ため思い切った攻め上がりのような積極性が感じられず、イタリア戦は一転、前半果敢に攻めたが、後半ここ一番でシュートを決めきれなかったことが敗北に繋がった。

  日本のサッカー選手のレベルは高い。それは世界のクラブでも知っている。だが、シュートを決める決定力で評価されているのは香川ぐらいであろうか(本田も勝負強さで評価されているが……)。

  以前、上海=長崎=釜山の3都市で開いた『日中韓都市間フォーラム』でパネルディスカッションのコーディネーターを務めたとき、ゲストスピーカーだったスポーツジャーナリストの二宮清純氏と意見を交わしたことがある。二宮氏は日本選手のゴール決定力が弱いのは「ここぞ」というときのシュートへ向けた意思決定が遅く、一瞬のチャンスを逃すからだという意見だった。それはサッカーの技術以外の問題だとも主張した。

 私が感じている日本企業、とりわけそのトップ・マネジメントの意思決定の遅さとあまりにも相通ずる話だったので、二宮氏とはすっかり意気投合してしまったのだが、実力は同じでも意思決定力の差がゴールの成功率に出るという指摘は興味深い。

 「今だ」と思った時にそのままシュートしてしまえないのは、他の選手など周囲のことを一瞬考えてしまうからであろう。自分の目で見、自分の頭で考え、自分の判断で行動に移る習慣が身についていないのはサッカー選手も企業のトップ・マネジメントも同じである。日本人選手は自分でシュートに行ってはずした時、よく仲間に誤っているシーンを見るが、海外の選手でそんなことをするのを見たことがない。ただ黙々と自陣に引き上げるのみである。その姿は(シュートを)外した責任は自分にある、と言っているように見える。

  日本企業は、いま必死になって「グローバル人材」を育てようとしているが、自分の目で見、自分の頭で考え、自分の判断で行動に移る習慣を身につけない限り、いくら英語力をアップし、海外知識を詰め込んでも、肝心の「意思決定力」「自分で責任を負う精神」が弱い限り、結局「グローバル人材」にはなれないのである。

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